人生タクシー
イランのジャファル・パナヒ監督による作品。パナヒ監督は、反体制的な作風などから、20年のあいだ映画に関わる様々な活動をイラン政府によって禁じられている。にもかかわらず、パナヒ監督みずからタクシー運転手に扮し、車内に搭載したカメラの映像をもとにつくられた“映画”が本作である。
タクシーの車内から覗き見るイランの街並みや(舞台がどこかはわからないが、想像以上に都市化した街並みに驚く)、タクシーのなかで繰り広げられる会話やふるまいから垣間見えるイランの人々の日常生活(なんというか、人と人の距離が近い。そして何より、パナヒ監督の姪っ子がかわいい!)は、もちろん興味深い。しかし、この映画の最たる魅力は、その着想の斬新さである。政府から禁じられているなかで、「このようにして映画を撮る方法があるのか」ということに驚かされる。自分のような人間であれば、禁じられてしまった時点で、映画製作を諦めてしまいそうである。そのなかで、パナヒ監督が本作のような映画をつくることができた背景には、映画製作にたいする彼の強い執念と、アイディアの豊かさがあったのだろう。
大学の課題で短編映画を撮るという若者とパナヒ監督の2人による次の会話からも、パナヒ監督の映画製作への姿勢が垣間見える。同時にこの会話は、自分を含め、何かをつくる仕事に従事するすべての人にとって示唆に富む内容でもある。
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「本を読み 映画を観て 題材を探してますが これというのが見つからなくて」
「いいかい 映画は すでに撮られ 本は書かれてる 他を探すんだ 題材はどこかに存在してる」
「何をどこから 始めればいいと?」
「そこが一番 難しい 誰も教えてやれない 自分で見つけるんだ」
残像
ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の遺作。ワイダ監督の作品を観るのはこれがはじめてだが、主にポーランドを舞台にして、レジスタンスや共産主義化した社会の末路などを描いた作品を多数残しているようである。パルム・ドールを受賞した『鉄の男』などもこれから観てみたい。
本作も、第二次大戦直後のポーランドを舞台とした作品である。前衛的な作風の画家であるストゥシェミンスキ(実在の人物らしい)は、芸術の政治利用(社会主義リアリズム)をすすめる当時のポーランド政権に抵抗する。大学を終われ、作品は非公開とされ、芸術家協会の資格も剥奪されるなど、ストゥシェミンスキは政権からの弾圧を受けるが、彼を慕う後輩たちや娘たちの協力も得ながら、みずからの矜持を貫こうとする。
ソ連の影響下で社会主義を推し進める当時のポーランドがどのような雰囲気であったのか、政治的なイデオロギーのために芸術がどのように利用されるのか、そうしたイデオロギーに賛同しない人々がどのように冷遇され、またそれにどのように抵抗したのか。本作の内容はこうした問いを考えることを促すものになっていると思う。
同時に、この作品では政治と芸術の関係、そしてそのなかで翻弄される人々が描かれていたわけだが、研究者を志す身としては、政治と学術との関係やそこに巻き込まれた人々の人生というのは、芸術の場合とどれほどリンクしており、どれほど違っていたのだろうか、といったことも気になった。
ともあれ、政府からの弾圧を受けながらもなお、みずからの信じる芸術を続けようとする——しかし、それはますます困難になっていく——ストゥシェミンスキの姿は、わたし自身に奮起を促してくれる反面、少なからぬ絶望を与えてくれるものであった。
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「諸君は自分の表現を模索してくれ」
「どのように?」
「自分で探すんだ。芸術も恋愛も自分の力で勝負するしかない」
二重生活
哲学専攻の大学院生・白石珠は、指導教官である篠原のアドバイスを受け、修士論文執筆のための調査として、無作為に選んだ個人への「理由なき尾行」を決行する。対象者に選ばれた白石の隣人・石坂は、一見セレブで完璧な一家の主人だったが、「尾行」を始めると、彼が不倫をしていることが判明する。石坂の不倫相手との密会、家族との不和などを次々と目撃し、「尾行」にのめり込んでいくなか、次第に同棲していたパートナーの卓也との関係もなおざりになっていく。
以前のバイト先の上司に勧められて観た映画で、「『現代日本における実存』って笑」「…調査倫理は??」などとツッコミどころもあったものの、おもしろかった。人間は特定の誰かといることで、満たされない自分の何かを満たしたり、逆に誰かと離れることで、それまで満たされていたはずの何かが失われ、自分すらも見失ってしまうことがある。そんなことが、白石の「尾行」をつうじて見えてくる。そして、ほかならぬその「尾行」それ自体も、白石自身の「深いところ」を満たしていくように白石には感じられるのである。
観ていておもしろかったのは、誰かをみているその人も、ほかの誰かによってみられている、という構図がところどころに見受けられたこと。「尾行」する白石も、行く先々で誰かにみられ、また逆に「尾行」される。「ああ、やはり観察者に徹することなどとうてい無理なのだ」などということを感じた。
沈黙-サイレンス-
★★★★★
遠藤周作原作、名称マーティン・スコセッシ監督作品。
キリシタンの弾圧が行われる17世紀中頃の長崎、行方不明となった師を探して、2人のポルトガル人司祭がその地を訪れるところから始まる。
暴力的な弾圧と厳しい困窮にあえぐ長崎のキリスト教徒たちと出会い、キリスト教の普遍的な教え、「真理」を伝える司祭たちだったが、想像を超える弾圧によって苦しむ人々を前に、沈黙したままの神への疑念が芽生えていく。
自分の出身地・長崎で行われたキリスト教弾圧については、歴史的な事実として知ってはいたつもりだった。しかし、それがどれほど厳しいものであったのか、弾圧を前に人々はどのように振る舞ったのか、なぜ人々は弾圧のなかでも教えを求め、信仰を捨てようとしなかったのか、日本にやってきた伝教師たちは何を経験し、どんな生活を送ったのか、なぜキリスト教はあれほど厳しく弾圧されなければならなかったのか・・・こうしたことについて、自分は何も知らないのだと、この映画を観て思い知らされた。
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★★★
戦闘シーンは圧巻の迫力だったが、サブのストーリーラインが多い&それらが回収しきれていない、ところどころ違和感がある描写が目につくなど、やや不満が残る内容でもあった。
カイロ・レンのこじらせ具合が増していて、そこは期待を裏切らない内容。
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★★★★
クリストファー・ノーラン監督作品。
4Dで観たが、音響が凄すぎて、途中で気分が悪くなった。