映画ログ

これまで観てきた映像作品の備忘録

未来のミライ


細田守監督作品。小さな男の子・くんちゃんが,未来と過去を行き来して,自分の家族たちと出会っていく。家族の絆がテーマであるにしろ,タイム・トラベル(なのか?)が仕掛けであるにしろ,もう少し細部を詰めておいたほうが,より物語にも入り込めたのではないかというのが率直な感想。

ボウリング・フォー・コロンバイン

 

マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー。なぜアメリカでは銃による殺人が他国とくらべて圧倒的に多いのか。それは,人種の混在や,銃保有数などでは説明できない。「なぜこの国だけがこれほど銃で殺し合うのか」。コロンバイン高校銃乱射事件という1つの悲劇を取り巻くアメリカ社会の“病理”を浮き彫りにする。

以下は,本作がアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したときのムーア監督のスピーチ。当時のブッシュ大統領に「恥を知れ」と言っている。

 





 

うなぎ

 

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 今村昌平監督作品。妻を殺した罪から仮釈放された男の目線から,罪を犯した人々を社会に復帰させるための様々な仕組みや,その過程で直面する様々な困難について見て取ることができる。

万引き家族

是枝裕和監督作品。

高層マンションが建ち並ぶ街の片隅にある平屋で,小さな男の子(祥太)を含めた血の繋がりのない5人が身を寄せ合って暮らしている。中年の男性(治)は日雇い労働者として働き,男性のパートナーである女性(信代)はクリーニング店でパートをしている。実家を飛び出してきた大学生くらいの女性(亜紀)は風俗店で働き,その女性の祖父の元妻である老女(初枝)は年金をもらいながら暮らしている。そして,祥太は治とともに,万引きをすることによって「家族」に「貢献」している。そんなふうにして,この「家族」のような人たちは暮らしていた。

ある日,祥太と治は万引きの帰り道に,団地のベランダに出された女の子(ゆり)を見つける。寒空のなかお腹を空かせたゆりを家に連れ帰ってみると,彼女の身体のあちこちに傷が見つかる。同じく暴力を受けた経験のある信代は,ゆりをもといた家族に返すことはせず,一緒に暮らしていこうとする——。

印象に残った2つのシーンがある。1つは,亜紀が働く風俗店の常連客(「4番さん」)と,亜紀が対面するシーン。「4番さん」の拳には傷があり,聞くと自分を殴ったのだという。亜紀が共感を示すと,「4番さん」は1粒の涙を流す。それをみた亜紀が「4番さん」を抱きしめると,「4番さん」は声を出そうとするが,彼は吃音でうまく話すことができない。一方では,あまりに作り込まれた設定とシーンだとも思うが,他方で,「4番さん」が亜紀の店に来るまでに経験した苦しみが凝縮されて表出されているようで,思わず目が潤んだ。

もう1つは,民生委員の男性が平屋を訪れる場面。民生委員の男性は玄関に招き入れられると,上り框にハンカチを敷いたうえでそこに座る。あたかもそのまま座ると汚いとでもいうかのように。民生委員は地域の名望家だが,身寄りのないひとりの老人に親身に寄り添う姿勢とは乖離するような振る舞いがおもしろかった。

Ready Player One


スティーブン・スピルバーグ監督作品。

2045年の世界では人びとが社会問題の解決を諦め、仮想現実「オアシス」のなかでみずからの望みどおりの生活を送っていた。主人公ウェイド・ワッツもまたそうした生活を送っており、「オアシス」の創始者ハリデーが遺した“エッグ”——これを獲得した者は「オアシス」の経営権を相続する——を探し求めていた。一方では同志や敵たちと現実/仮想現実を跨いだ競争を繰り広げ、他方では謎に包まれたハリデーの過去に迫りながら、ウェイドはエッグへの道のりを進んでいく。

荒廃した現実世界と、何でもありの仮想現実とのあいだを登場人物たちが行き来しながら物語は展開していくが、その前提となる設定がよくわからないような箇所がところどころある。たとえば、「オアシス」では企業が利用者を強制労働に従事させるなど、明らかな違法行為ともとれる行いをしているにもかかわらず、政府による介入がなされていない(例外のケースもけれど)。ではこの世界で、国家や政府というのはどのような存在なのだろうか。他方で、ほとんどの人びとが賃労働に励むことなく「オアシス」のプレイに勤しんでいるようだが、生活を営むために必要な金銭などはどのようにして獲得しているのだろうか。「オアシス」で得られるコインは、現実世界の貨幣と交換可能なのか、否か。こうした設定は曖昧なままである。

それでも、個人的には、「オアシス」の世界はとても魅力的だ。とりわけこの作品には、様々なゲームやアニメのキャラクターが登場するなど、数多くのオマージュが盛り込まれている。それら作品のファンにとっては興奮まちがいなしだ。

手紙は憶えている

森達也さんがおすすめしていたので観てみた映画。

認知症の老人・ゼブは、友人から依頼され、アウシュビッツでみずからの家族を殺したナチスのドイツ人兵士への復習の旅に出る。たびたび記録を失くしながらも、友人からの手紙を頼りに容疑者を突き止めて行くゼブだったが、最後には思わぬ真相が明らかになる。

この種の「どんでん返し」はサスペンス映画の王道と呼べるものだろうが、「ユージュアル・サスペクツ」や「シックス・センス」のような衝撃はなかった。