映画ログ

これまで観てきた映像作品の備忘録

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


1960年代にアメリカで小切手詐欺事件を起こし、「天才詐欺師」と呼ばれた男性の自伝小説をもとにした映画。巧みな嘘で人を欺き魅了するフランク(レオナルド・ディカプリオ)と、彼を追うFBI捜査官カール(トム・ハンクス)との逃走劇をコミカルに描いている。「ここまでやるか」と思わせるフランクの詐欺の手口には思わず笑ってしまう。

「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」などもそうだが、「内面に不安定さを抱えた金儲けの天才」といった役回りにおいて、レオナルド・ディカプリオの怪演が光る。

ザ・グレイテスト・ショーマン

ヒュー・ジャックマン主演。社会で隠蔽・差別された人びとを集めたサーカスを開き、成功を手に入れようとする男の半生を描いた作品。

なんといっても、音楽が素晴らしい。作品中でも強烈を印象を与える楽曲「This is me」の練習風景を記録した以下の動画は観る人の心を打つ。



羊の木

 

羊の木(DVD通常版)

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「桐島,部活やめるってよ」の吉田大八監督作品。犯罪者たちの「社会復帰」を描写した作品として,その日常生活の様相をうまく描けているかといえばそうでもなく,またサスペンスとしては,最後のオチが拍子抜けで,むしろクスッと笑ってしまうような結末だった。

と,このブログを書きながら,作品のウェブサイトを眺めてみたところ,漫画「寄生獣」の作者である岩明均さんのコメントになるほどと思わされた。この作品のすぐれた点をうまく言い当てているように思う。

味わい深い。登場者たちの些細なしぐさ、セリフに思わず「クスッ」となる。繊細な作りだ。そして場面は繊細な「日常」からダイナミックな「非日常」へ。観る者が呆気にとられるような「非日常」、それへの移行がとても自然なのはやはり繊細に作られているからだろう。のどかで、しかし緊張感あふれる世界に、やさしく、強引に誘いざなわれる。

未来のミライ


細田守監督作品。小さな男の子・くんちゃんが,未来と過去を行き来して,自分の家族たちと出会っていく。家族の絆がテーマであるにしろ,タイム・トラベル(なのか?)が仕掛けであるにしろ,もう少し細部を詰めておいたほうが,より物語にも入り込めたのではないかというのが率直な感想。

ボウリング・フォー・コロンバイン

 

マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー。なぜアメリカでは銃による殺人が他国とくらべて圧倒的に多いのか。それは,人種の混在や,銃保有数などでは説明できない。「なぜこの国だけがこれほど銃で殺し合うのか」。コロンバイン高校銃乱射事件という1つの悲劇を取り巻くアメリカ社会の“病理”を浮き彫りにする。

以下は,本作がアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したときのムーア監督のスピーチ。当時のブッシュ大統領に「恥を知れ」と言っている。

 





 

うなぎ

 

うなぎ 完全版 [DVD]

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 今村昌平監督作品。妻を殺した罪から仮釈放された男の目線から,罪を犯した人々を社会に復帰させるための様々な仕組みや,その過程で直面する様々な困難について見て取ることができる。

万引き家族

是枝裕和監督作品。

高層マンションが建ち並ぶ街の片隅にある平屋で,小さな男の子(祥太)を含めた血の繋がりのない5人が身を寄せ合って暮らしている。中年の男性(治)は日雇い労働者として働き,男性のパートナーである女性(信代)はクリーニング店でパートをしている。実家を飛び出してきた大学生くらいの女性(亜紀)は風俗店で働き,その女性の祖父の元妻である老女(初枝)は年金をもらいながら暮らしている。そして,祥太は治とともに,万引きをすることによって「家族」に「貢献」している。そんなふうにして,この「家族」のような人たちは暮らしていた。

ある日,祥太と治は万引きの帰り道に,団地のベランダに出された女の子(ゆり)を見つける。寒空のなかお腹を空かせたゆりを家に連れ帰ってみると,彼女の身体のあちこちに傷が見つかる。同じく暴力を受けた経験のある信代は,ゆりをもといた家族に返すことはせず,一緒に暮らしていこうとする——。

印象に残った2つのシーンがある。1つは,亜紀が働く風俗店の常連客(「4番さん」)と,亜紀が対面するシーン。「4番さん」の拳には傷があり,聞くと自分を殴ったのだという。亜紀が共感を示すと,「4番さん」は1粒の涙を流す。それをみた亜紀が「4番さん」を抱きしめると,「4番さん」は声を出そうとするが,彼は吃音でうまく話すことができない。一方では,あまりに作り込まれた設定とシーンだとも思うが,他方で,「4番さん」が亜紀の店に来るまでに経験した苦しみが凝縮されて表出されているようで,思わず目が潤んだ。

もう1つは,民生委員の男性が平屋を訪れる場面。民生委員の男性は玄関に招き入れられると,上り框にハンカチを敷いたうえでそこに座る。あたかもそのまま座ると汚いとでもいうかのように。民生委員は地域の名望家だが,身寄りのないひとりの老人に親身に寄り添う姿勢とは乖離するような振る舞いがおもしろかった。