映画ログ

これまで観てきた映像作品の備忘録

ロジャー&ミー

 マイケル・ムーアが初めて監督を務めた作品。ムーア自身の解説によると、サンフランシスコでの雑誌編集の仕事をクビになったムーアが、失業給付を受けながら製作した作品らしい。

 GM創業の地であるフリントでは、1980年代後半に工場の閉鎖と工員のレイオフが相次ぎ、大量の失業者で溢れかえっていた。生活の基盤を失った多くの市民たちが住居からの立ち退きを命じられ、犯罪率も急速に悪化していく。ムーアは、GMの会長であるロジャー・スミスがフリントの惨状に目を向けるよう働きかけるため、あの手この手で取材を申し込むものの、ロジャーのガードは堅く、なかなか面会にこぎつけることができない。一方、取材に応じる富裕層の市民たちは、豪勢なパーティーを催したりゴルフに興じたりしながら、大量失業はフリントという「美しい」街の一面にすぎないと口にする。

 営利を追求する企業の政策によって、労働者たちの生活が脅かされ、街自体が荒廃していくなかで、後手後手に回った自治体行政の施策も功を奏すことがない。その様相を、執念深い取材によって詳らかにした作品。「頑張れば成功する」という教示の欺瞞を皮肉を交えて示している。

 個人的には、度重なる立ち退き(eviction)の映像と、失業した労働者たちの新たな仕事としてアムウェイが推奨されていることに衝撃を受けた。