映画ログ

これまで観てきた映像作品の備忘録

パレードへようこそ

 

パレードへようこそ [DVD]

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 ★★★★★

1984年に起きたイギリス炭鉱労働者によるストライキと、それを支援に乗り出したゲイ・レズビアンの団体(炭鉱夫支援同性愛者の会:Lesbians and Gays Support the Miners:LGSM)の活動を題材にした、実話をもとにした作品。

当時のサッチャー政権といった「同じ」敵に直面する、ゲイ・レズビアンの人びとと炭鉱労働者やその家族たちが、「連帯」の理念のもとに支え合う様子とその困難とがコミカルに描かれた作品。

麦の穂をゆらす風

 

 ★★★★

1919年から1921年にかけてのアイルランド独立戦争、その後に発生したアイルランド内戦を描いた作品。ケン・ローチ監督作品。ケン・ローチの作品を観るのはこれが初めてである。

アイルランド独立戦争やその後の内戦についてはこの映画を観るまでほとんど知らなかったが、映画では戦争にまつわる出来事が、独立戦争をともに戦い、その後の内戦では対立していくアイルランド共和軍の一兵士の目線から描かれていて、当時の戦争の雰囲気を知ることができる。英国軍の支配から自由になるため、ともに痛みを分かち合いながら戦った人びとのあいだに対立が生じてくる様子からは、抑圧や暴力といったものがいかに繰り返し生起してくるものであるかということを痛感させられる。

同時に、痛みや暴力の連鎖が生じていない状況にあるということがいかに自明なことでないかということについても気づかされる。

「それでは表は緑だが 中は赤い帝国だ」

「俺たちは英国人じゃない」

誰も知らない

 

誰も知らない

誰も知らない

 

 ★★★★

是枝裕和監督作品。柳楽優弥主演。東京で暮らす4人の兄弟が、誰にも知られることなく——つまり「社会」から知られることなく——生きていこうとするさまを描いた作品。なぜ社会は彼らを知ろうとしないのか/知ることができないのか、なぜ彼らは誰からも知られたくないのか。考えさせられる。

「ブラス!」

 

ブラス! [DVD]

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 ★★★★★

イギリスの炭鉱町で活動するブラスバンドに関わる人々の物語。

イギリス国内で炭鉱が次々と閉鎖されていった1980年代。バンドで演奏する男たちも仕事を失い、それまでの普通の生活、そして尊厳を失っていく。組合の解体、家族の崩壊など、それまで人々をつなぎとめてきた連帯も薄れていく。

ブラスバンドの華やかな演奏とともに、「経営の側」に翻弄されていく労働者たちの惨状と、たくましさとを描いた作品。

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

★★★

「ブロークバックマウンテン」などにも出演したジェイク・ギレンホールが主演。妻を亡くした男の人生の崩壊とその後、といった内容だが、個人的には話の展開がやや掴みにくかった。

「シング・ストリート 未来へのうた」

 

シング・ストリート 未来へのうた [DVD]

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 ★★★★★

主演は歌手のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。徐々に歌が洗練されていく過程は率直に感動する。

一見、映画の主題は、未来を追い求める若者と恋愛模様のようにもみえるが、エンドロールの冒頭に「すべてのきょうだいに捧ぐ」とあるように、この映画はきょうだい(兄弟)という人間関係が1つの大きなテーマになっている。

主人公のコナーは、兄の影響を受けながらミュージシャンとしての道を歩んでいく。弟であるコナーが、音楽を通じて(恋愛を含めた)みずからの人生を「未来」を志向しながら進んでいく一方、彼の音楽を支えてきた兄は、みずからの人生の行く先を描くことができず、閉鎖的なアイルランドの生活から抜け出すことができない。「ロンドン」(イギリスではなく「ロンドン」と言っていたのが印象的)へと向かうコナーを見送る兄は、その船出に歓喜しながらも、複雑な表情を垣間見せている。

先を歩んでいるはずながら行く先を見出せない兄と、兄の背中を追っているはずながらみずからの未来を見出していく弟。このアンビバレントな関係性が、イギリスとアイルランドという国家間の非対称性ともリンクさせられながら、ポップな音楽とともに描かれた作品、とでも言えようか。