映画ログ

これまで観てきた映像作品の備忘録

「海街diary」

評価:★★★★

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是枝裕和監督作,カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品である.てんでバラバラな性格をもちながら1つ屋根の下で暮らす3姉妹のもとに,腹違いの妹が新たに移り住むことになる.新たな4人の「姉妹」をとりまく何気ない日々のなかに垣間見えるさまざまな人生模様を繊細に描いた映画.

印象的なシーンは,姉妹の長女・幸と,彼女と不仲な実の母親とのあいだでの,ささやかだがもどかしい歩み寄りがみられるシーン.幸の祖母の法事の日,ふたりは住まいの存続をめぐって言い争う.後日,北海道へともどる前に娘らに手土産を渡しにきた母親に連れ立ち,幸は祖母の墓参りへ行く.母親が祖母直伝の自家製梅酒を懐かしく思っていることを知り,幸は自宅に最後に残っていた祖母みずからが漬け込んだ梅酒を手渡す.帰りの駅で梅酒を受け取った母は,幸の方を振り返り手を振りつつ,帰っていく.

親と子とは,「本当は」もっと相手に歩み寄りたい,相手に対して思いを伝えたいと思いつつ,2人のあいだにはなにか一定の間隔をもうける壁があるかのように,それはなかなか実行することができない.たとえば,帰省から下宿先へともどる際,その場で別れる相手に対して,「本当は」なにか伝えたいことがあるような気がする.日常生活のなかでなんらかの節目を迎える際,「本当は」なにか相手に対して表明したい思いがあるような気がする.でも,それはなんだがうまく伝えられなくて,「本当」からちょっとずれたことを話してみたり,「本当」を包み込むなにかのモノを渡すことで代弁させようとしてみたりする.でも,「本当は」歩み寄りをすすめたかった2人のあいだの距離はあまり変わることがなく,なんだがやるせない気持ちになったりする.

こんな経験を,自分自身が普段の生活のなかでよくするのだが,この経験を,上に述べた場面は非常に繊細に描き出していたような気がする.

なぜ,こんな経験がなされてしまうんだろう.なぜ,「本当は」伝えたいなにかをうまく伝えることができないのだろうか.なぜ,それができる相手とできない相手がいて,概して肉親に対してそれができないのだろうか.日常生活のなかで,これからも考えていきたいところである.

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

 

ウルフ・オブ・ウォールストリート [DVD]

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 評価:★★★★

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マーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演の恒例タッグが送るコメディ映画.ウォールストリートの「狼」と呼ばれた株式ブローカー,ジョーダン・ベルフォートの半生を題材にした伝記的な作品である.才能に恵まれながらも金とセックスとドラッグにまみれゆく彼の人生の過程は波乱万丈で見ごたえがあった.

スコセッシ監督の作品において特にいえることだが,ディカプリオはなかば狂乱じみた奇才をもつ人物を役に見事によくはまる.この作品においてもそれが感じられた.

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こんな記事を見つけた.

オレにこのペンを売ってみろ | CHANGE THE CONSUL|服部慎也(FACTDEAL Inc.)

映画のなかでベルフォートは,さまざまな人に対して1本のペンを差し出し,「私にこのペンを売ってみなさい」という.

たいていの人は,「このペンは素晴らしい書き心地で……」などと,そのペンに内在する価値をベルフォートに対してアピールする.しかし,それではペンは売れない.これはただの普通のペンなのだ.

あるクスリの売人はいう.「このナプキンに名前を書いてくれ」.ベルフォートはペンを持っておらず,名前を書くためには彼はペンを書かねばならない.必要によってモノが売れたのだ.

しかし,重要な点はその先にある.ベルフォートは,株式を売却する際,見込みのある客に電話をかけまくり,こういうのだ.「この企業の株を買うことで,あなたにはこんな将来が待っている……」.モノを売るときに重要なのは,そのモノ自体がどれほど優れているのか(その企業がどれほどの将来を有しているか)を主張することではない.そのモノを買うことにより,顧客にはどのようなバラ色の将来が到来しうるのか,換言すれば,顧客のどのような「夢」が叶うのかを,顧客が見通せるようにすることこそが重要なのだ.モノを売るのではない,モノによって叶えられる「夢」を売っているのである.

「エレファント」

 

エレファント デラックス版 [DVD]

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 評価:★★★★

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1999年にコロラド州で起きたコロンバイン高校銃乱射事件をテーマにした映画。カンヌ国際映画祭パルム・ドールと監督賞とをはじめて同時に獲得した作品。

作品自体は単調にすすんでいくが、その構成の仕方は独特であり、日常のなかに突如として——しかしあくまでもその延長線上に——入り込んだ悲劇が印象的に描かれる。

「ブロークバック・マウンテン」

 

 評価:★★★★

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同性愛が1つのテーマ。そこから、「愛にはどのようなかたちが可能か」というテーマに踏み込んでいっているという感想。

想像していたよりも描写が過激で、少し驚いた。